作者別: 児島 聡

ボックスのデザイン、クライアントの御用聞き係。文系の私大出身だが、素人ながらCAD・DTP・webデザインをやる羽目になっている。外注に出さなくても、内部でアイディアをカタチにできるTRCCの職場環境は、意外と得難いものであると感じている。本職は紙資料の修復技術者。TRCCの取締-られ-役でもある。1967年4月生まれ。

研修会の講師にお呼ばれしました

研修風景① 11月10日に亘理町立郷土資料館にて、宮城県南資料館等連絡協議会の担当者研修会でレクチャーの講師をする機会を頂きました。
内容は2題、
「資料(文化財)を管理する担当者が持っておくべき基礎知識」
「資料の安定化に向けて(保全と応急手当)~アマチュアの起こす失敗とやれること~」
午前と午後に分かれて、4時間の研修会となりました。

集まって頂いたのは協議会に加盟している13名の方々。
参加者皆さん、ほとんどの方が私とは初対面ですし、最初は固い感じの空気で始まりましたが、時間がたつに従って、皆さんとの距離も縮まってきて、和やかな雰囲気になりました。
研修風景② 午前中はコンサバター目線で、「指定文化財の修復(修理)の心構え」をお話しさせてもらい、そのあと「保存と環境:文化財の保存と環境「歴史資料について」「カビについて(一般的な話・震災対応の話)」「資料保存の話」というテーマを駆け足ですが触れていきました。
午後は、修復の話で、ちょっと専門的な話で「接着とはなんだろう。」という話から、メチルセルロースと生麩糊を触って頂いた後に、安全な手当ての方法の一例として、増田勝彦先生の「微小点接着法」とTRCCで作っている「糊和紙」という、少量の水分で補修できる和紙のシートを紹介して、皆さんに実際に使ってもらいました。水を使った繕いは素人には難しい行ないであることを十分にわかって頂けたようです。
研修風景③ あわせて修復などをアウトソーシングする際の業者との対峙の仕方など、受け身にならないための方法なども伝授してまいりました。

研修風景④ それぞれ館によって持っている問題は異なるのですが、共通して抱えている問題は、保存や修復について相談できる窓口を持っていないということ。
相談ができないので、日頃の業務の中で、保存のこと、環境のこと、劣化損傷のこと、たくさん持っているのに、どこにも相談できないまま、少しずつ劣化していく収蔵物を眺めているだけの状態を甘んじているということです。
ホントは「プリザベーション・アドミニストレーター」的な立場の方が、最低でも県に一人でも常駐していたら良いのですが。

また防災対策でも、館の所蔵資料への防災・減災のガイドライン・マニュアルの整備があやふやなこと。
象徴的だったのは「文化財防災ウィール」についてお話しをした時です。午後の時間の少し余った時間を利用させて頂き、ウィールにまつわる話をさせてもらいました。
文化財防災ウィール」皆さんご存知でしょうか?これは2004年にTRCCが協力し、文化財保存修復学会が監修して、全国の所蔵機関に配布されたもの。「これは文化財防災ウィールというものですが、見たことがありますよね?」と質問したところ、手が上がったのは一人でした。ホントは「皆さんの館ではどこに掛けられていますか?」という話をして、そこに災害時の連絡先の記入がされているか確認し、その重要性を語りたかったのですが、それ以前に、ウィールそのものが存在していませんでした。もしかした掛けられていても風景と化して自覚がなくなってしまっているか、どこかに挟まれたまま置かれているのかもしれませんが、いずれにしまして存在を忘れられている、ということです。
3.11の時に、有って助かった、という噂を聞いたことがあるのですが、実態はどうなのでしょう。
そのウィールの片面に諸機関への連絡先を記入できる欄があるのですが、アメリカ版では、身近なコンサバターへの連絡先、という項目があるのですが、これは日本版からは抜けてしまっています。身近にコンサバターがいないので仕方ないのですけどね。でも何かあったときには、絶対に必要な連絡先なのですが。
皆さんには日頃の諸機関(消防署など)とコミュニケーションが大事ですよ、何かあったときに頼れるところとの「平時のお付き合い」が必要です、とお伝えしました。

皆さんとお話しした中で、震災後の対応で、一番の問題とした上がったのが、行政では、災害が起こった後は人命救助や被災者へのケアが最優先で、文化財や史料へのケアは後回しにせざるを得ない、という現実です。ちなみにそれは当たり前じゃない、と思われる方もおられると思いますが、それは先進国において国際基準の考え方ではありません。人命救助と資料の救出は「別問題」とならず、一緒に語られてしまうところに「日本の特徴」があるのです。北米では、所蔵品に保険をかけていて、有事にはプロの業者が、救出に向かうシステムとなっていますが、日本にはそのサービスがありません。
北米の災害マネージメント
北米の災害マネージメント
行政においては、生涯学習と文化振興が同じ組織が受け持っていることが多いと思いますが、災害があったときに、生涯学習課が被災者の支援の業務を任じられると、文化振興の分野の業務は停止してしまうということになるのです。被害が甚大になればなるほど、支援が長期化し、文化財の救済はずっとずっと後回しになります。結果、文化財や史料は、がれきの中でカビやバクテリアなどの微生物の格好の餌食となって、いざ救出が始まった時には、見るも無残な姿に変容することになります。覆水盆に返らずで、何か月前には健康を保っていた史料も、ごみ同然に朽ちてしまい、ただ嘆くばかりの状況となります。
現状では、本来、平等・均等であるべき「保存」と「活用」の業務のバランスですが、所蔵品の「活用」ばかりに重点を置かれて、「保存」対策とのバランスに不均衡を生じているようです。明日来るかもしれない大災害を前にして、このままでは、またもや被災地で多くの文化財が失われていくことになるでしょう。
これも私たち市民として対策してければならない問題ですね。TRCCも自分たちのできることを積み重ねて、この問題に取り組んでいきます。

AIC大会:参加者の投稿から

安田さんがレポートしているAIC大会ですが、(そのレポート内でも紹介されていますが)AICの「All Posts」に彼らの発表を聴講した人からの投稿を、児島からも紹介します。

44th Annual Meeting – Saving and Preserving Family and Local History from Natural Disasters: Addressing Challenges from the Recent Earthquakes in Japan

私は英語が不得意なので、インターネットの翻訳ソフトを使いながら訳しながら読んだのですが、その文面からも、とっても興味深く聴講してもらっていることが伝わってきます。せっかくですので、恥かきを承知で、私が訳した文を参考までに載せさせて頂きます。以下が訳文となります。(意訳・直訳、混在しております。悪しからず。おかしな部分は原文-上記青字の題名をクリック-におあたりください。)

《 2011年に起きた日本の津波への対応に関して発表しているこのパネルは、天野真志、日沖和子、石丸(安田)智子と吉原大志がプレゼンターでした。天野氏と吉原氏は両人とも歴史研究者です。そして、安田さんは東京にある民間企業のコンサバターです。日沖さんはアメリカ合衆国のコンサバターで、質疑応答セッションの間の彼女の優れた翻訳には心から感謝しています。

プレゼンテーションの内容は、北アメリカの聴衆に対して、驚くべき、いくつかの面白い文化的な「違い」を明るみに出すものでした。大多数の公的な記録資料(吉原氏によると、数は90%に上るかもしれないと)は、公的または政府機関よりはむしろ、個人所蔵で保管されているというのです。このことは、ひとたび災害が起きれば、誰が所有者であるのか、どんな記録が巻き込まれたか、または、それらの記録がどこにあるか知ることが、しばしば困難になることを意味します。よく史跡において、まさしく歴史的または現代の記録資料が屋根裏やコミュニティ・センターで発見されます。これは、税資料、戸籍と法的文書を含むものです。

日本における自然災害の傾向は、もう一つの重要な「違い」を引き起こします。あまりリスクを取らない日本の保険会社には、自然災害向けのサービスを提供することは到底できません。これは公的機関や個人所有のコレクションは、修復業者に費用を払うことについて保険を適用させることができない、ということです。だから日本では、復興支援のできる修復業者が非常に少ないのです。日本の個人や公的機関では、ひとたび自然災害に見舞われれば、われわれの住む北アメリカで受けることができる同じ緊急災害対応サービスには頼ることができない、というのが結論です。

プレゼンターから2011年の津波後の災害復興を支援している彼らの仕事についての話がありました。プレゼンテーションの大部分は、史料ネットの活動に焦点が当てられていました。(津波に対応した宮城の事例では英語表記のブログがあります)
史料ネットとは、特に保護問題を扱うために災害に応える歴史家とボランティアの草の根の組織であり、例えば、可能な場合はいつでも、記録史料の所在調査を行ったり、救出して保全処置を行います。史料ネットは、1995年の阪神-淡路大震災の後にできて、日本の全域で、24の地域に連携が広がりました。

当初から史料ネットは、記録資料の90%といわれる、いまだ図書館と文書館に所蔵されていない史料の保全に注力しました。その活動は、すべてメンバーシップ会費と寄付によって資金を供給されています。史料ネットは、2004年の兵庫県での洪水において初めて本格的なコンサベーションを行いました。この災害の間、彼らは、ボランティアに教えられることのできる簡単な応急手当処置を行う上で、コンサバターと働くことができ、そして、彼らが遭遇した困難がワークショップ開催を促進させ、コンサベーションができるボランティアのためのボランティア・トレーニングのセンターとなりました。もう一つの洪水が2009年に兵庫で起きたときは、対応がより迅速に、そして、文書へのケアのレベルはより良いものになりました。今や、史料ネットは経験豊かな組織であり、災害対応はもちろん、リーダーシップ・トレーニングとボランティア教育を目指しています。

プレゼンターによる講演の、第2のおもな焦点は、2011年の地震と津波に対する史料ネットの対応に関したものでした。被災地域での活動では明らかな難しさが存在し、それは、大勢のノンプロの力をもって活動することの難しさでした。復興の過程の上に、史料ネットは、5,000人のボランティアと活動しており、そのような絶えず変わる人員を供給し、管理し、またトレーニングするための技術を開発しなければなりませんでした。災害のスケールと範囲が広く、救出作業は災害の3年後でも進行中の状態でした。津波が起きてから、史料ネットは70,000点以上の資料を救い、そして、少なくとも50,000点が処置をいまだに待っている状態です。

プレゼンテーションは情報に富み、魅力的なものでした。異なる国において直面した異なる挑戦と、それらの挑戦が対応・克服された方法について聞くことができて面白かったです。彼らの話題についてわたしがこのポストを作成することに対して、もう一度プレゼンターに感謝をしたいです。》

以上が投稿の訳文です。日本はコンサベーションでは随分と理解と存在が進んでいない国なので、欧米のコンサバターからみると、驚きの事実が多々あるようです。「民間にこんなにもたくさんの記録資料が点在しているんだね」「こんなに災害が多い国なのに、保険が適用できないなんて」「ボランティアでこの事態に対応しようなんて、チャレンジだよ。ほんとびっくり」
発表したプレゼンターの伝えたいことが、直球で伝わったようで、4人の努力が報われたのでは、と感じます。 4人には2年後の大会でも後日譚、もしくはさらなる発展を報告する野望があるようなので、楽しみです。

TRCCのホームページをマイナーチェンジ

以前から予告していましたが、TRCCのホームページの改良工事が終わり、ようやくリリースすることができました。
改良のポイントは、、、
1、スマフォやタブレットでの閲覧が容易になるように、可変グリッドレイアウトというツールを使って制作、デバイスの解像度に応じてレイアウトが組み変わる形に。
2、Indexページ(いわゆるホーム)で各コンテンツを視認できるように、見える化を図りました。
3、TRCCの技術ではなく、仕事や事例などがわかり易くなるように、コンテンツを新設しました。
といったところです。
例えば新しいコンテンツですが、東京国立博物館所蔵の重要雑録の修復や、工房内でリハウジングを行なった恵泉女学園史料室の段ボール資料のリハウジングの工程の紹介など、TRCCの仕事の一部ですが、ウェブ上で見て貰えるようにしました。
始めてTRCCのことを調べに来た人も、今までリピートして訪れてもらった人も、迷い込んで入ってきた人も、最初のホームのページを見ただけでウェブサイトの全体を俯瞰できるようになったのではと思います。
今後ともTRCCをご贔屓のほどお願い致します。

レポート:カビナイバックの効果について

気が付けば秋。しばらくブログ更新を控えて、仕事に忙殺される日々を過ごしておりましたが、そんな中でこの夏の後半戦を使って、例のカビナイバッグ(前回ブログに取り上げ)のテストを行なっておりました。簡単に報告をしたいと思います。

【水濡れ資料テスト】
8月6日から準備を始めました。まず和本のサンプル〔版本〕を用意して、これを3等分にカットしました。それをバットに浸水させて、木曜~日曜の間、放置しました。
サンプル(和本)
今回のサンプル(和本)
カットしたサンプル
3つのパーツに分けました











週明け月曜に覗いてみるとバッド内の水が粘り気を出して茶色く濁っていました。既に表紙の上にはカビが一部見え、白カビと黒カビが数か所発生してました。
浸水4日後
4晩水に浸すと茶色く水が濁り、サンプルにもカビが生える
水濡れ資料の臭いは、過去の國學院大での水濡れ資料と同じように、もっさりとした微妙な発酵臭が感じられました。懐かしいようなこの臭いは水濡れ資料の普遍的な香りなのでしょうか。
資料は一度水道水にて浸して軽くゆすぎ、吸水紙で軽く水気を取りました。








2日目
2日目/それぞれ袋詰めされたパーツ
左:カビナイバッグ 中央:ユニパック 右:ユニパック・エタノール処理
さて3パートに分けた意味なのですが、比較できるように以下のように異なる流れにしました。
(1) 消毒用エタノールに浸し、殺菌後にチャック付きポリエチレン袋:ユニパックに収める。
(2) そのままの状態でユニパックに収める。
(3) そのままの状態でカビナイバッグに収める。








糊:左がカビナイバッグ・右がユニパック
糊:左がカビナイバッグ・右がユニパック
水濡れ資料以外にも、出来立ての生麩糊とメチルセルロースの混合糊を小分けカップに入れて、普通のビニール袋とカビナイバッグにそれぞれ入れて、並行して経過を見ることにしました。
設置場所は木製棚。床面から1メートルほど上の棚です。温湿度データロガーを置いて、30分ごとに測定しました。測定初めの湿度は47%温度32℃でした。
(2)の「そのままの状態でユニパックに収める」のものですが、これは、2日目に白カビが見え始め、次第に範囲を広げ、8日目に黒ズミが広がり、目立つようになり、9日目には黒ズミが濃くなり、それ以降は黒い部分がよりはっきりとし、白カビも範囲を広げていきます。
(1)のエタノールに漬けたものは、黒カビも白カビも見えず、表面の色合いの彩度が落ちた感じに見える感じになった以降は、そのままの状態で推移しました。
黒ズミが広がる
9日目/中央:ユニパックに黒ズミが目立つ
サンプルに膨らみ
13日目/左:カビナイバッグの資料に膨らみを感じる

白カビが増え始める
一か月後/左:白カビがサイドに粒状発生
中央:白カビの範囲が広がる
さて、本題の(3)の「そのままの状態でカビナイバッグに収める」のものですが、これは(2)のように黒カビは見えず、(1)のように表面の彩度が落ちることもありませんが、8日目に白カビが資料の断面に少しずつ見え始め、12日目にさらに断面に目立つようになりました。
そして、13日目に資料の膨らみが目立ち始めました。この現象は、(1)にも(2)にも見られません。そこで、15日目に(1)~(3)の袋のチャックを開けて臭いを嗅いでみました。
(1)は袋に入れた時の発酵臭が少し増した感じ。(2)は発酵臭がかなり強くなっていました。さて(3)のカビナイバッグですが、これは明らかに(1)(2)と違った臭いで、明らかに生ごみのような腐敗臭がしました。見た目で資料が膨らんできたのは、腐敗のガスが発生しているからなのではないかと感じました。
これ以降は細かく毎日観察しても意味がないように思え、またチャックをきっちり閉めて、暫くそのまま放置することにしました。




回収直前
45日目/左:白カビあり、資料に膨らみ続く
中央:表面一面に白カビの層
右:カビは目立たず
そこから一か月後の45日目には、一気に(2)の白カビが資料を覆いつくし、(2)と(3)の臭いも強くなってきたので、ここで経過観察を終えることにしました。
(1) エタノール漬け処理:当初に比べ発酵臭は緩やかに増している感じ。表紙の色は黒く沈んだ感じだが、微生物の繁殖はほかの2点よりも、かなり抑えられている。今の状態からでも修復可。
(2) そのままユニパック詰め:白カビが表面を覆い、厚い層となり、コーティングされた砂糖菓子のよう。黒カビの濃い黒の部分もそのまま。発酵臭は強く、めくると糸を引く。
(3) カビナイバッグ:色に変化はなく、白カビはところどころ見える。資料が膨らみはあり、腐敗の臭いはさらに強くなる。




糊の傷み
45日目/糊:カビナイバッグは縮み硬くなる
ユニパックは全体に黒茶色へ変化
また小分けカップにいれた糊については、一か月くらいは見た目の変化は見られませんでしたが、それ以降はそれぞれ違った変化が表れました。
・カビナイバッグ詰め:カビが目立たないが、薄茶のシミが見える。水分が抜けて体積が小さくなった。(空気の流通があり、乾燥したようだ)
・ユニパック詰め:水分は抜けずに大きさは初めのままだが、濃く黒と茶のカビが広い範囲に広がり生えている。






袋出ししたサンプル
袋から出した状態
中央のパーツの傷み
中央:めくると粘り気があり、糸を引く
カビの種類を分析することはしませんが、おそらく一般的なものでしょうから、黒いカビはススカビ・コウジカビといわれる菌で、白カビは、実はカビではなく酵母であるそうで「産膜酵母」といわれる菌だと思います。
ここまでの経過観察の内容をまとめ、カビナイバッグの特徴を考察しますと、


〔カビナイバッグの特徴〕
・黒カビの繁殖を抑える。
・白カビ(酵母)の発生を抑えることはできない。(成長のスピードは遅くなる)
・モノの内部で腐敗が進行するので、有機物を分解する微生物の働きを抑えることができない。
・袋の素材は、水蒸気の流通があると思われる。
となるでしょう。
つまりカビナイバッグは、「水分量の多いものを入れると、腐敗や白カビの繁殖を抑えられない」という特徴が考えられます。
また、通気性があるようなので、湿度の高いところや、極端に乾燥したところに置くと、外気の影響を受ける可能性が高い、ということが言えると思われます。

また水害資料の救出の対処法のひとつであるエタノール処理についてですが、
〔エタノール漬けの特徴〕
・黒カビ、白カビの繁殖を抑える。
・微生物を殺菌し、繁殖を抑制する効果がある。また、腐敗臭はなく、発酵臭となる。
となりました。
ここにおいても、定番でもありますエタノールでの殺菌処理の効果を実感することができました。

ちなみに、経過観察期間の温湿度の変化ですが、以下のグラフのようになりました。期間中の温度の平均は25.4℃、湿度の平均は52.9%。湿度も、例の大水害のあった時期にかなり高くなってしまいましたが(除湿機の能力を超えてしまいました)、割と安定した環境だったと思います。
温湿度変化グラフ
8月11日~9月25日の温湿度変化

ちょっと夢に描いてみたりした「カビナイバック」の被災資料の時間稼ぎ効果ですが、手放しでは利用できませんが、その効果は限定的でも有益な部分を狙って使うことは出来そうかな、という感触です。
今回は個人の趣味レベルの実験ですので、研究者が面白がって、専門の機関で実験でもしてもらえたらな、と思います。

展示会で見つけた「カビナイバッグ」とは?

カビナイバッグ02先週金曜日(2015年7月10日)に東京ビックサイトに行き「国際文具・紙製品展(ISOT)」を見て回ってきました。ポリプロピレンと炭カルで作った合成紙や、紙を積層にしてカード類を挟めるおしゃれなグッズやファイリングで綴じ具を外さなくても抜き差しができるバインダーやら折り紙できる箸袋やら、紙にまつわる提案型の商品に満ち満ちておりました。個々の企業の持つ技術を応用したアイディアを商品にして、直に販売店に卸して販売を目論む中小企業がたくさんいて、それぞれよく考えられた面白い商品もたくさんあることを目の当たりにして、弊社のスマファイ も頑張らねば、と気を引き締めた次第でございます。
そんな展示会会場で見つけたのが、コレ、「カビナイバッグ」。なんと“カビが生えるのを防ぐ”チャック袋です。株式会社トップ堂という会社の持つ「カビナイコート」という技術を応用した商品だそうです。カビナイコートの特徴をウェブから拾うと「カビナイコートとは、これまでにない抗カビ性能をグラビア印刷にてパッケージに塗布した、全く新しい概念の印刷物です。また、人体に有害な添加物や溶剤を使用しておりませんので、あらゆるパッケージにお使いいただけます。」とのこと。
一般用途としては、カビが生えて困る食品やアクセサリー類の保管が例として上げられております。この高温多湿の日本では、特に革製品の保管で効果を発揮するでしょう。なにしろ袋内のカビの浮遊菌の細胞壁を破壊して、微生物を仮死状態にしてしまう効果があるというのですから、カビが生えるまえにこの袋で保管すれば、あとは使うまで入れたままにしておけば良いということになります。ホコリよけにもなりますね。面白い商品が出てきたものです。(ちなみに使用上の注意に「カビが既に付着している品物には効果がありません。」とあり。 f(^ ^))
ISOT会場にて、ブース前でこの商品を手に取りながら、そこはコンサバターの性でして、これを水濡れ資料の緊急避難のツールにできないか、と考えておりました。災害で紙資料が水害に遭ってしまったときに、とにかく濡れたままでも、カビが生え始める前にこの袋に入れてしまえば、本格的な救出の処置を取ったり、専門家に見てもらうまでの時間稼ぎができるのでは、と。
災害対策を考えなければならない公的な所蔵機関の方々、この機能をちょっと検証されてみてはいかがでしょう?ひとたび災害に巻き込まれ、資料たちが水濡れしてしまい、ああ、カビが生えてしまう、臭いもしてきた、でもなにもできない、そんな藁にもすがりたい状況になれば、こんなアイテムが、急場を救ってくれる救世主になるかもしれませんものね。

水濡れ資料の修復の記事のアーカイブ追加

k008_0077月初旬、梅雨まっただ中。あらゆるものが湿気を帯びて、日に日に不快度の指数が上がっております。
もう半月もしないうちに夏へと突入していきますが、資料の保存する機関でも「空調」が大活躍を始めることと思います。しかし、この空調。ひとたび不具合を起こしますと、大事故につながる恐れがある魔物でもあります。とくに大きな建物のセントラル方式の空調システムは、ひとたび事故を起こしますと、大事件となってしまいます。もう7年も昔になってしまいましたが、児島の経験を「現代の図書館」という雑誌に掲載した記事があります。(「現代の図書館 Vol.46 No.2 (通号 186) [2008.6]」)
これは空調の配管の不具合で、冷熱を運ぶ大量の循環水が一気に噴き出し、大学の研究室を水浸しにしてしまった事件が2007年の夏にありまして、大事な研究資料のうち、古文書53点を修復した顛末を報告したものです。
東京修復保存センターのホームページの「TRCCのアーカイブ・コンテンツ」にコンテンツとして加えました。空調事故の内容ですが、もちろん、洪水などの水害対策でも参考にして頂けると思います。これから夏を迎えるにあたりまして、ぜひご一読のほど。(久しぶりに自分の書いた文章を見返しましたが、こなれていないなかでも一生懸命に書き綴っております。ご笑納のほどお願い申し上げます、といった気分です。f^_^)

「保存と活用」の保証と災害対策 ~水濡れ資料の救出と修復作業を通じて~

掲載時は白黒の画像でしたので、ウェブ用に作り替えるにあたりましてカラー画像にしております。自分でもこの画像を見ると、当時、資料から発せられていた発酵臭~サイレージ飼料のような、もっさり(?)した臭い~ のガチでリアルな記憶が、鼻の奥に立ち上がって参ります。なかなか印象的で微妙に不快な臭いでした。

このブログやTRCCのホームページも、またはウェッブショップのほうも、夏の終わる9月あたりまで、順次バージョンアップをして、より使いやすく皆さんのお役に立てる情報を発信できるように改善をしていく予定となっております。乞うご期待!でございます。