作者別: やすだ ともこ

2012年6月にスマートファイリングラボのWebshopを開店して店長してます。
会社では歴史資料の修復という真面目な仕事をしながら、仲間とラボを作って、エコでおしゃれで機能的なファイリングを研究中。商品化もスタート。

AIC参加記3

今回は4人でのパネルの他に、天野さんと吉原さんがArchives Conservation Discussion GroupのTIP Sessionにもエントリーしました。TIP Sessionとは体験からの役立つ情報=TIPを発表する企画です。2人は簡単な英語でできるワークショップのデモンストレーションを予定していたのですが、当日に「今年はデモンストレーションは無しでパネル形式」と判明。急きょパネル用のプレゼン準備をして本番に備えた臨機応変な2人!日沖さんが通訳、私は記録担当です。

AIC_tip_5.17_all1

スピーカーは7名。
1)NARAの人:火事にあった公文書の焦げた部分のIRやデジタル撮影の試み
2)Kanasas大学Librariesの人:災害対応時のスタッフの工夫
3)Harverd大学のPreservation Centerの人:濡れた資料の応急対応の直後の教訓
4)Texas大学の人:図書館の濡れた本の自然乾燥の方法
5)Library of Congressの人:濡れた本の大規模な対応
6)神戸史料ネット吉原さん:濡れた資料を身近な道具で乾かす方法
7)宮城資料ネット天野さん:被災資料をボランティアさんと再現する方法

 

米国記録文書館NARAや議会図書館LoC、大学図書館のライブラリアンやコンサバターが自然災害で焼けたり濡れた資料の扱い方やスタッフトレーニングの経験談からの教訓をプレゼンする一方で、Shiryo-Netの天野さんと吉原さんは身近なモノを使った水損資料の乾燥方法や被災資料の再現といったヒストリアンによる異色のプレゼンで面白かったです。

聴衆の質問も鋭い。Q「Shiryo-Netのボランティアはいつどこに派遣するかどうやって決めるのか?」Q「所有者は自分から連絡するのか?」Q「日本にはAICのような災害時に連絡できるコンサバターの組織があるのか?」Q「どうやってShiryo-Netはボランティアの参加を促すのか?」という、Shiryo-Netをもっと知りたい!というツッコミの形でいい質問が続きました。

A「Shiryo-Netは平時から資料や所有者把握しているため、災害が起こったら、たとえ所有者から連絡ができなくてもShiryo-Netから連絡をとることができる。そしてレスキューのためにボランティアを派遣する体制を作る。そのために日頃から時間をかけて所有者と良い関係を築くことが重要なんです」
A「日本にも保存修復学会があるがAICに比べて規模は非常に小さく専任スタッフがいない。Shiryo-Netはコンサバターにレスキュー技術を教わることもある」
A「Shiryo-Netはヒストリアンのボランティア団体で、国内の様々な地域ネットワークを通じてメンバーへの参加を呼び掛けている」
彼らもあらためて日本でこういう質問をされることがなさそうなのでいい機会になったのではないでしょうか。

私自身も天野さんが泥に浸漬した資料の再現したと初めて知って「歴史研究者なのにコンサバターみたいなことしてるなぁ」と資料ネットってここまでしているのかと感心した次第です。

AIC参加記 2

 AIC大会について、ちょっとまとめます。
会場は東京フォーラムやビックサイトみたいなモントリオールで一番大きなコンベンションセンターです。
 1日目はメイン会場で午前中にGeneral Sessionがあり、午後は分科会のSpecial Session。分科会は専門分野の発表でArchitecture, Book&Paper, Collection Care, Electronic Media, Emergency, Objects, Paintings, Photographic Materials, Research Technical Studies, Sustainability, Textiles, Wooden Artifacts。なんと12もありました。
 1日目の夜はモントリオール美術館を貸し切ったオープニングレセプション。それ以外に、大会期間中、各分科会のランチミーティングや夜にレセプションがあり、北米中からコンサベーション関係者が集まる機会なので、情報交換の場がたくさん設けられています。
 2日目はAMが分科会でPMがGeneral Session。3日目の最終日はAM・PMに分科会とTip Session。ちなみに我々のパネルは2日目の午後のGeneral Session(Emergency,Disasterがテーマ)のDコース。このセッションもA~Eと5コースに分かれていて盛り沢山です。プログラムも雑誌みたいに編集されて詳細なスケジュールが載っているのですが、読み返してようやくわかってきた感じ(^^ゞ
 というのも、今回我々は2日目と3日目に英語のプレゼンがあったので、4人でリハーサルと準備に集中したため、1日目と2日目のセッションは参加できなかったから。残念でしたが仕方がなかったですね~。

 私は3日目AMのBook&Paperの分科会Sessionに参加しました。
 Book&Paper分科会には見たところ200人以上いて女性が多かったですねぇ。科学的な発表が続き理解が難しかったのですが、その中で印象的だったのが1966年のフィレンツェの洪水の時に大活躍したPeter Waters(2003年没)の奥さんSheilaさんのスピーチ。
 Post-flood Development of Mass Treatments at the National Library of Florence:the Roots of Library Conservationというタイトルで、50年前の生き証人としてMass Conservationの必要性や当時のコンサバターの様子や記録用紙など興味深い写真とともに振り返り、最後は皆がスタンディングで拍手して感動的な光景でした。イギリス人のPeter Watersは職人的だったRestorationとConservationの世界にたくさんの資料を効率的に安全に手当てするという考え・手法を取り入れた功績でとても尊敬されているのかがわかりました。実は今年フィレンツェ洪水から50年を記念して出版した「Waters Rising」という本のお披露目だったみたいで、ミーハーな私は早速その場で買ってサインしてもらいました。(せっかくカナダまで来たんですからね!)

そしてBook&PaperのランチミーティングのTip Sessionも参加しました。広い会場で12:00~2時間、30分のプレゼンが2つ、10分のミニプレゼンが3,4つありました。お弁当やリンゴを食べながら聞くカジュアルなスタイルですが、真面目にメモしている人も多く(ここも200人以上いた)質疑応答もあってセッション間の時間を有効に利用しているなぁと感心しました。

 

アメリカのAICカナダ大会に参加しました

スタッフの安田です。アメリカの文化財保存修復学会のAICのカナダ・モントリオール大会に初めて参加したのでそのご報告をします。(AIC=American Institute for Conservation of Historic and Artistic Works)
海外のコンサベーションの大会はIICとIADAに行ったことがありますがAICは初めて。しかも今回はスピーカーとして参加。
テーマは「Emergency!Preparing for Disasters and ConfAIC_tomokoronting the Unexpected in Conservation」。
メインは5/15日~17火の3日間で、前後の13,14,18にツアー、Pre-conference sessionやworkshopなどのイベントがあり、盛り沢山なスケジュールです。
私のプレゼンは2日目5/16月の午後のセッション(2:00-3:30pm)で日本人4人によるパネル90分間。

タイトルは、Saving and Preserving Family and Local History from Natural Disasters:Addressing Challenges from the Recent Earthquakes in Japan (自然災害から個人や地域の歴史を救い保全する:日本における最近の地震からの課題に取り組む)

メンバーは
ケンタッキー大学のConservation Librarianの日沖和子さん
神戸史料ネットの吉原大志さん
宮城資料ネットの天野真志さん
TRCCの安田智子の4人
ヒストリアンとコンサバターの混成チームです。テーマといい、このメンバーといい、なぜ?なのかはまたの機会に書きますね。

Processed with Rookie Cam

パネルの構成は、
日沖さんの担当は、スピーカーの紹介とアメリカの聴衆のために日本とアメリカの文化財保存や指定制度など背景の違いの概説です。
吉原さんは日本全国の資料ネット(総称としてShiryo-Net)についてプレゼンする役目です。1995年の誕生の経緯や市民ボランティアとの関わり、20年間に発生した災害で行ったレスキュー活動や吉原さんが行っている被災資料を手当てするワークショップの成果を紹介しました。
天野さんは2011年の東日本大震災による激甚な被害を被った宮城県での宮城資料ネットの活動についてのプレゼンター。被災地のヒストリアンとして5年間の資料のレスキュー経験を話しました。未指定資料も救済しやすくなった一方で、宮城資料ネットが今なおレスキューし続けて、膨大な被災資料を抱えて、ボランティアだけでは処理できないジレンマがあると課題もあげ、コンサベーションの専門家と協力し合う必要性に気づいたことを話しました。
私、安田はコンサバターとして資料ネットとの関わりをプレゼンする担当。2011年に宮城資料ネットや他の資料ネットの現場を訪れた経験やその後宮城でのワークショップを機にTRCCのマスコンサベーションの考えが資料ネットの2人に理解されていった経緯、レスキュー資料の保全が長期化している現在の問題にも触れました。天野さんを受けて、資料ネットとコンサバターと市民ボランティアが一体となって日本の歴史資料を保全するマスコンサベーションを模索中ですとつなげて終えました。

質疑応答では次々と質問がありました。(これが大事ですよね!)
Q 資料ネットの活動は今でも資金面で厳しいのか?
Q アメリカでは災害の場合は保険などで民間の災害復旧会社が対応するのが一般的だが、日本はないのか?資料ネットはそういうサービスも使えないのか? 
Q 資料ネットの市民ボランティアで資料を扱うのに興味を持ってコンサバターになりたいという人がいるか? 
Q 資料ネットのボランティアには海外からきてくれたことがあるか?外国人でも参加しているか?

答えは、以下です。
A 資料ネットは今でも資金的には厳しい
A 日本はアメリカとは保険制度が違うので民間の災害復旧会社やコンサバターに依頼するのは現実的ではない
A コンサバターへの関心を持つボランティアはあらわれたが現実的には厳しいようだ
A (資料ネットにではないけれども)海外の資料保存関係者から、被災資料の応急処置や資料所蔵機関の災害対策に関する文献が送られてきたことがある。

いずれも、資料ネットやコンサベーションに関する本質的な質問だったので、我々のプレゼンが聴衆に伝わったんだなぁ~とわかりとても嬉しかったです!
「よくわかったよ、いいプレゼンでしたね」とNY大学のコンサバターやDCの災害関係者の方に声をかけていただき、初めての海外での発信は成功といえるのではないでしょうか。AICのサイトに私たちのパネルの感想が載っているのをみつけました!「日本からのこのShiryo-Netの発表では、北米の災害のコンサベーションと違う対応でボランティアが資料を救っていること、ただし膨大な資料を救うにはさらなる展開developが必要がある、国が違うと資料の背景や被災資料を見つけて救い出す方法が違っていることは驚きだ」とありました。以下がコメントの全文です→

http://www.conservators-converse.org/2016/06/44th-annual-meeting-saving-and-preserving-family-and-local-history-from-natural-disasters-addressing-challenges-from-the-recent-earthquakes-in-japan/

こういうふうに感想を寄せてくれるとはうれしいですね。海外で日本のことを発信する機会を持つことで、いろんな気づきが得られたAICの発表でした。

AICの参加記はもう少し続きますね。

中東古地図遊覧:古地図の見方

東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所(府中市)で開催中の中東地図遊覧という展示会についてご案内します。

19~20世紀初頭の中東の大判古地図が展示されています。大きいものは2m近くありますが描写がとっても細かく 近くに寄ってみてしまいます。オスマン語やアラビア語はわからなくても、地図好きならたまらないのでは?

IMGP4553IMGP4547面白いのは、AA研で開発した多層ベースマップ・システム(MBS)で、展示中の古地図がGoogle Mapsと重ね合わせたり、空撮写真と比較しながら見ることができることです。昔の地図にはある海岸線が埋め立てられたり、村がなくなったりしている一方、市街地の街路が昔のままに残っていたり、地図って面白いですね。試しに、数年前にイスタンブールに修復の仕事で滞在したスレイマニエというモスクを見てみたら、古地図にあるモスクとGoogleMapsの写真がきれいに重なり、なんだか嬉しくなりました!ちなみに、弊社は地図のデータ化や展示の額装をお手伝いしました。

 展示場に足を運べない方は公開されているMulti-Layered Basemap Systemをぜひご覧ください。中東周辺の古地図のデータベースがあって自由に見ることができますよ。 展示会期は3/25-5/31まで、10:30-17:00(土日祝休場)入場無料 →中東地図遊覧

コンサベーション関係の本

7月第1週のロンドン滞在中に本を買いました。一番のヒットはTate Modern Museumのショップで買ったPaper and Water A Guide for Conservators (2011年 DVD付 著者Gerhard Banik, Irine Bruckle 541pp) →Amazonリンク  保存科学者とコンサバターがまとめたコンサバターのための紙と水の解説書です。 水素結合などの化学的知識から水の特性、乾いた紙と濡れた紙の構造と特性といった各特性、紙の劣化やコンサベーション処置の水作業や乾燥について、欧米の保存科学者とコンサバターの英知を結集させてコンパクトかつ幅広く、理論的にまとめてくれている本です。 とにかく表紙がスマートおしゃれで、本文中のプロのデザイナーによるイラストがとてもかっこよすぎます。用語解説も索引も整っていて便利な参考書になるのは間違いありません。デザイン力が内容を盛り上げていて素晴らしいです。 TRCCはマスコンサベーションの会社で洋紙を扱うことも多く、リーフキャスティング法を用いているのでPaper and Waterはまさにリーフキャスティングの理論的裏付けって感じです。私が学生だった時にこんな本があったらよかったのになぁとため息が出ます。 著者はドイツ語圏の人ですが英語で出版されたため1年前に出版された専門書にも関わらず、結構売れていてすでに在庫が少なく増版されるらしいです。各論をまとめた本が多い日本でなかなかお目にかかれないタイプの本です。著者の皆様ありがとう!Dr. Banik & Dr.Bruckle, Thank you very much! そして、コンサベーション専門書店ARCHETYPEではテクニカルな本としてConservation Mounting for prints and Drawingsの他、製本や樹皮紙の本など5冊に、40年前のフィレンツエの水害の報告書Conservation Legacies of the Florence Flood of 1966を買いました。本は実際に手に取ってみて買うのが一番ですね。内容と価格は当然ながら写真やレイアウトなどでその洋書を読みたくなるかどうか決まります。           ARCHETYPEのブラックさんとは10年前の2002年のIIC(International Institute for Conservation of Historic and Artistic works)の学会アメリカ・ボルチア大会で知り合いました。日本に暮らしたことがあり「クロちゃんと呼ばれていた」そうで、とても温和ないい人です。ブラックさんは「ボルチモアの大会はホントによかったですね。日本人のペーパーコンサバターがあんなにたくさん集まったのは初めてでしょう。」と懐かしがっていました。海外の学会の発表に対する質疑応答の時間は多くて参加者からの質疑はとても実践的で率直で、文化財保存修復学会とちょっと感じが違うなと思ったのを覚えています。

おかげさまで、あのボルチモア大会で会った日本人のペーパーコンサバター(表具師の方も)とは今でも交流が続いている人が多いです。また再会できたらいいなとふと思いました。

ロンドンのコンサベーション専門書店

初ブログに書き込みの安田です。ロンドンに7月2日に着いて翌日はHolbrnでワークショップに参加しました。 そこで10年前のIPCのボルチモア大会で会ったブラックさんに再会しビックリ。ブラックさんの店はコンサベーションを専門に扱うArchtypeという書店です。日本でいうなら、クバプロでしょうか。考古や金属、セラミック、写真、紙やテキスタイルなど専門書がたくさんあり、欧米のコンサバターには重宝な書店です。 彼も覚えていてくれて、ワークショップの後オフィスに寄って、コンサベーションの本を見せてもらい、紙関係をものをたくさん買ってしまいました。やっぱり、直接手にとってみるのはいいです。ついつい買ってしまいますが。今のところ電子ブックはしないそうです。 日本からわざわざ来てるんだからとディスカウントしてもらい、重いから送ってもらうことに。 本をたくさん買ったからでしょうか彼の行きつけのパブで食事とビールをおごってもらいました!!! 普段ビールを飲まない私にぬるいイギリスのビールは飲みやすかったです。 写真はまとめてアップします。