アーカイブのリハウジング【基礎編】

入門編に続いて、またまたリハウジングです。
日本でアーカイブの保全や整理に関して、これが教科書というのは見当たりません。したがって公文書館や資料収蔵機関では、古文書整理の手法を基にして、行政文書などの近現代資料を保管しているのが現状です。ただし近現代資料アーカイブを和綴じの古文書と同じように扱うのは無理があります。
昨年度、近現代の歴史資料アーカイブの保全手段としてのリハウジングをNAJで調査研究したことを踏まえて【基礎編】と【実践編】に分けてわかりやすくご紹介したいと思います。

♪リハウジング基礎編 Basic Lesson about Rehousing♪
★リハウジングの流れ
まず最初に「資料の形態を変えずに収納を改善して使いやすくし、破損や汚損を増やさない予防処置」であるリハウジングですが、現在の形態を絶対に変えてはいけないという意味ではありません。資料管理者の多くが、グシャッと紐で括られたり綴じが外れかけている扱いにくい形も「原形」と思っているように思えます。不格好な厚い簿冊をわざわざ採寸して作った箱に入れることを、形態を変えずに収納を改善することだと思われがちです。箱に入れば確かに不格好な印象は見えなくなりますが、中身はありのままで~♪でちっとも使いやすくなってません。
これは公文書館における基本原則の原形保存の原則に「原形はできる限り変更しないこと」とあるからでしょう。たしかに古文書は綴じ方、折り方、括られ方なども重視されますが、近現代資料の場合ちょっと異なります。昭和の戦前戦後の資料を悲惨な状態で受け入れた場合、それは原形というより現状と言う方が相応しいはずです。
もちろん、このグシャッと折って紐で括って変形した状態も痕跡として意味があり原形保存の対象と見なすならば、それはできるだけ尊重してリハウジングするのが望ましいです。問題は何を原形として保存の対象とするかです。日本の近現代の公文書や簿冊資料の原形保存の概念をどのようにリハウジングに適応させるか。リハウジングに取り組む前にここを整理しておくと、リハウジングの流れが組み立てやすくなります。
ではどうするのか。
まず、リハウジング前の現状を記録に残してください。その上で思い切って古い紐は切ります、分厚い資料なら厚みを記録して分冊します。これが原形保存の原則と記録の原則に基づいたリハウジングの流れです。現状では扱いにくい資料の形態は変えなければ何もできないからです。資料を受け入れたらリハウジングというくらい業務の流れに組み込めると理想的です。

★リハウジング作業
1)現状記録    Documentation
2)紐等の除去   Removing
3)ドライクリーニングDry Cleaning
4)整形      Reshaping
5)容器収納        Repacking
6)再排架         Reshelving
*英語のイメージがわかりやすい場合もあるので併記しました。

主なリハウジング作業について簡単に説明します。
1)現状記録 Documentation
作業前に資料の現在の状態を記録する。調書作成と外観撮影。
2)紐等の除去 Removing:
資料の紐をほどくあるいは切る。包み紙を除去する。
3)ドライクリーニング Dry Cleaning:
資料の表紙、天、地、小口等の塵や埃を刷毛できれいにする。
4)整形 Reshaping:
資料の折れやシワを伸ばし大きくはみ出した文書を中に納めて全体を整える。
5)容器収納 Repacking(Repackagingともいう):
必要に応じて資料を紙やボードと紐で包んだり定型のファイルボックスに収納する。
6)再排架 Reshelving:
パンフレットボックスを利用したりして資料を傷めない排架に変更する。

基本的にこの1~6の作業はすべて修復保存の専門知識を持たない人にできることばかりです。実際にNAJのリハウジング調査研究の時は全員が修復保存の未経験者でしたが、マニュアルと現場監督者のレクチャーだけで作業できました。シンプルな作業なので手間も時間もかかりません。リハウジングした棚の資料は手に持っても汚れが付かなくなって安心して出し入れできるようになりました。結果として資料を傷めるストレス要因がなくなり扱う担当者の負担も激減しました。
もちろんリハウジング工程だけでは利用に供せないような劣化損傷がある資料に対しては、軽度の修復・本格的な修復が必要とされるわけでそれは専門家に任せます。その判断はマニュアルにプラスして作業者が経験を積むことで可能となります。
より具体的な作業内容やコストについて【実践編】でまとめます。

★リハウジングの心構え
繰り返しになりますが、公文書館における基本原則の原形保存の原則では「史料の原形はできる限り変更しないこと」とあり、同じく記録の原則では「史料群の現状に変更を加える場合は記録に残す」とありますので、記録さえきちんと残せば形態は変えてもよいのです。例えば、イギリスの国立公文書館のリハウジングのマニュアル[Preparation of Records]には「厚過ぎるファイルは5㎝以下になるように分冊しなさい」とちゃんと書いてあるんです。欧米が全て正しいというつもりはありませんが大いに参考になります。
ということで、近現代資料アーカイブは原則をふまえた上で、ファイリング整理の手法で使いやすく収納改善してリハウジングしてほしいと切に思います。

*参照:NAJのリハウジング報告書
脱酸性化処理・リハウジングの試行実施を通じた調査研究業務 報告書