アーカイブのリハウジング【実践編】

基礎編では、アーカイブの原形保存において資料にどんな処置を施したのかという記録を残すことで、基本原則から外れることなく、資料の現状を改善して保全することがリハウジングですとお伝えしました。 リハウジングの基本作業自体は誰でもできることです。誰でもできるようにするには、マニュアルと監督役(=リーダー)が必要です。したがって実践編では、実際の作業について、これからリハウジングに関心を持つみなさまにお役に立つようにご紹介します。

♪リハウジング実践編 Advanced lesson about Rehousing♪

1)現状記録    Documentation
2)紐等の除去   Removing
3)ドライクリーニング Dry Cleaning
4)整形      Reshaping
5)容器収納    Repacking
6)再排架         Reshelving

●1)現状記録 Documentation
<記録:調書> 記録する項目は、年月日、通番号、資料番号、置き方、大きさ、厚さ、資料のタイプと綴じ形態です。 手っ取り早いのは、紙の調書に手書きで記入する方法ですが、後々のことを考えると、便利なのはタブレット入力です。NAJの調査研究もタブレットを利用しました。調書を何枚も持たなくてよく、項目の変更・追加も簡単で、入力データはそのままリハウジングのデータベースになります。
<記録:画像> 調書を補完する記録として画像を残します。デジカメで撮影しますが、近現代アーカイブ資料は似たようなものが多いので、代表的な資料をデジカメで撮影したら、後は「以下同文」扱いにできます。棚の外観撮影をしておくのもよいです。
<記録:その他> 記録は資料に目を通す機会なので大切ですが時間をかける必要はありません。リハウジングで劣化破損の診断をするならば、「診断基準マニュアル」を用意してください。診断に個人差が生じないように、平成26年度のNAJの劣化調査の診断基準、診断マニュアルの解説を参照してください。(pp63-70)

●2)紐等の除去 Removing
<紐・包み紙の扱い> 麻紐、ビニール紐が簡単にほどけなかったら、ハサミで切ってください。古文書と違って結び方などに特別な意味はほとんどありません。変わった紐は廃棄するかどうかをリーダーに照会してください。包み紙なども同様。
<資料の扱い> 紐や包み紙を取った後は、資料の順序が変わらないように気を付けて、仮置き箱を用意して納めます。資料が分厚ければ、適当な量に分けて枝番を付けて箱に入れます。ドライクリーニングの時に順番がわかるようにします。なお、仮置き箱は蓋のない浅いトレーのような形状がよいです。

●3)ドライクリーニング Dry Cleaning
これはクリーニングマシンが必要です。ない場合は、段ボール箱などで代用するしかありませんが、作業環境を整えるのは資料にとっても作業者にとっても大切なので、ぜひ購入してください。TRCCで使用しているHEPAフィルター付で優しく吸引してくれる卓上型はおススメです。
<クリーニング> 毛が柔らかい刷毛ややや堅めの刷毛をホームセンターなどで用意してください。最初はページを開かないで外側に付着した埃や塵等の汚れを払い落とします。次に表紙やページを開いて内部に入り込んでいる汚れを払います。紙が折れている部分や綴じの隙間には埃が入り込みやすいので、毛足の長い刷毛で丁寧に除去します。触っても手が汚れない程度になったら完了です。

●4)整形 Reshaping
本紙の折れやシワを伸ばしたり、はみ出した文書を整えて冊子の中に納めます。大きなパンチ穴の外れ程度なら綴じ直します。劣化が著しい文書があれば、封筒に入れたりしてバラバラにならないようにします。また錆びた金属留め具(ステープラーやクリップなど)について、除去するかしないかはリーダーに照会してください。
<整形と修復の違い> 道具や時間を要する専門的な修復技術と違い、リハウジングにおける整形は、原則として水や糊を使わないで文書の形状を改善する作業です。折れやシワを伸ばしたり、文書の偏りやはみ出しを整えるだけで、ずいぶんと資料が扱いやすくなります。1冊を修復する時間と費用で何十冊もの資料がリハウジングできるともいえます。

●5)容器収納 Repacking
資料を傷めないように使うのが容器・包材です。棚に排架しやすい定型の容器に資料を納めて保護します。例えば、縦に排架する薄い資料はパンフレットボックスに、封筒に入ってる資料はファイルボックスに納めます。いずれも出し入れによるストレスが改善されます。かぶせ箱も角0封筒が納まる小型サイズがあると資料がまとめて納められるので便利です。 文書のはみ出しや軽度の破損がある簿冊資料は保護用紙で包んで2㎜程度の厚いボードでしっかりと挟むアーカイブラッパーと紐帙(ヒモチツ)を組合せてリパッキングします。厚すぎる資料は分冊して保護用紙に包んで紐帙に挟みます。
<容器収納の効果> 容器が定型だと、スペースに無駄がなく排架がすっきりとします。資料に合わせて容器を作るより、容器に合わせた方が案外整理しやすいです。ちょっと傷んだ資料や弱い資料を紐で横方向に一重に括る、封筒に入れるといった簡単な方法だけでも資料を傷めません。簿冊資料のアーカイブラッパーと紐帙の組合せは、縦置きでも横置きでも、隣り合う資料を傷めないので便利です。

●6)再排架 Reshelving
棚を乾いた布で拭いてから資料を並べます。ファイルボックスやパンフレットボックスを利用すれば資料を積み重ねずに立てて排架できます。 再び排架する段階は資料を手に取っても黒くならないし出し入れしやすくなるのでとても気持ちがいい作業です。 3回に分けて、アーカイブ資料のリハウジングについて書いてきましたが、ここで小休止。 このトピックはスマファイに通じるものなので、また具体例やマニュアルについてもご紹介します。リハウジングしてみたいなと思ってくださったら幸いです(^.^)。リハウジング用の保存容器を近々webshopでも扱う予定です。詳しく知りたい方はスマファイ店長までメールしてください。

★おまけ
NAJのリハウジング調査ではしなかった書庫内作業ですが、オランダのアーカイブでは書庫の一角でリハウジング作業を行っARA_verpakkenてました。スタッフ2名が資料を刷毛でクリーニングしてから包材で包んで収納するリパッキング作業は、動線に無駄がなくテキパキと手を動かしてとてもシンプルな流れが印象的です。 オランダの公文書館職員のマニュアルの中にVerpakken van Archievenというリハウジングの章がちゃんとあるからだと思われます。(図はリパッキングの机や備品の配置図)  

★リハウジングの視点
日本のアーカイブズでもリハウジング的なことは当然行われています。受入れ資料を燻蒸して汚れを落として登録して収蔵するという一般的な流れはほぼリハウジングです。違いは、資料が紐で縛られて分厚かったり、汚損破損がひどい状態だと、利用が困難な資料として、原形保存に則った修復対象のように扱われてしまいがち。当然、大量の資料の修復予算はないためストップします。それをリハウジングの視点でみたら、クリーニング→整形→リパッキングの作業でかなり多くの資料が整理できるようになります。

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